歯周病治療はいいので虫歯治療だけしてください!
「虫歯の痛みだけ取ってくれたらいい」「歯周病治療は痛そうで面倒だからしたくない」
歯科医院では、こうしたご要望をいただくことがあります。
忙しい現代において、治療に時間や費用をかけたくないという患者さんの気持ちは、私たちも痛いほど理解できます。早く目に見える虫歯を治したい、その一心だと思います。
しかし、歯科医院として、そのご要望に対して「待ってください」とお伝えするのは、あなたの歯を守るために他なりません。
実は、「虫歯だけ治療して歯周病を放置する」という選択は、目先の解決にはなっても、将来的にご自身の歯を失うリスクを大幅に高めてしまう非常に危険な選択なのです。
なぜ「虫歯治療だけ」ではいけないのか?この記事では、歯周病を避けて通れない理由を正直にお話しします。
なぜ「虫歯治療だけ」ではダメなのか?2つの病気の深い関係
「虫歯は穴があく病気、歯周病は歯ぐきが腫れる病気」と別物のように考えられがちですが、実はこの2つには深い関係があり、どちらも口腔内の細菌バランスの崩れが原因で起こる感染症です。
1. 同じ細菌が治療を無意味にする
虫歯菌も歯周病菌も、多くはプラーク(歯垢)という細菌の塊の中に存在します。歯周病が進んでいる口腔内は、この悪玉菌の温床です。この環境でどんなに精密な虫歯治療(詰め物や被せ物)をしても、細菌がうようよいる不衛生な場所に新しい建物を建てるのと同じです。結果として、治療したばかりの歯の隙間から再び虫歯が再発したり、他の健康な歯に新たな虫歯ができやすくなります。
2. 土台(歯周組織)が不安定では、家(歯)は持たない
歯周病は、歯を支える歯ぐきやあごの骨(歯槽骨)を溶かしていく病気です。
この歯周組織は、家でいうところの土台です。土台がグラグラなのに、上物である歯(虫歯)だけをどんなに綺麗に治しても意味がありません。土台が崩れれば、やがてその歯は抜け落ちてしまうからです。まずは、土台である歯周病をしっかりコントロールし、安定させることが、虫歯治療を長持ちさせるための大前提なのです。
歯周病を放置する「真の代償」は虫歯の再発だけではない
「虫歯治療だけしたい」というご要望の裏には、「歯周病はなんとなく大丈夫」という根拠のない安心感があるかもしれません。しかし、歯周病を放置することの真の代償は、単に虫歯が再発すること以上の深刻なリスクを伴います。
1. 歯を失う最大の原因は歯周病
実は、日本人が歯を失う原因の第1位は、虫歯ではなく歯周病です。痛みもなく静かに進行するため、「気づいた時には手遅れ」となり、多くの歯を一度に失うことになりかねません。
▼歯を失う原因
2. 全身の健康を脅かす「サイレント・キラー」
歯周病菌は、歯ぐきの炎症から血管を通じて全身に侵入します。その結果、以下のような全身疾患と密接に関わることが医学的に証明されています。
糖尿病: 歯周病が悪化すると血糖値のコントロールが難しくなり、糖尿病を悪化させます。逆に糖尿病の悪化が歯周病を進行させるという負の連鎖があります。
心臓病・脳卒中: 血管内で炎症を起こし、動脈硬化を促進させ、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めます。
誤嚥性肺炎: 口腔内の細菌(特に歯周病菌)が、誤って肺に入り込むことで発症します。
このように、歯周病を放置することは、お口の中だけの問題ではないのです。
あなたの歯を守る「賢い選択」とは?理想的な治療ステップ
それでは、ご自身の歯を長く、健康に保つための「賢い選択」とは何でしょうか。それは、治療の優先順位を見直すことです。
賢い治療ステップ:まずは「土台の安定」から
当院が推奨する理想的な治療の流れは、家を建てるのと同じです。
ステップ1:緊急処置(痛みの除去など)
まずは、激しい痛みや腫れなど、緊急性の高い虫歯や症状を最小限の処置で取り除きます。
ステップ2:歯周病の初期治療(土台を安定させる)
この段階で、徹底した歯石除去(スケーリング)やブラッシング指導などを行い、口腔内の細菌数を減らし、歯ぐきの炎症を抑えます。多くの患者さんは、この時点で歯ぐきが引き締まり、口腔環境が劇的に改善します。
ステップ3:本格的な虫歯治療(家の上物を建てる)
土台が安定した清潔な環境で、安心して詰め物や被せ物の虫歯治療を行います。この順番で進めることで、治療した虫歯の寿命が格段に伸びることが期待できます。
歯周病治療への誤解を解く
「歯周病治療は痛い」「時間がかかる」というイメージをお持ちかもしれません。しかし、現在の歯周病治療は、初期段階であればほとんど痛みを感じずに進められます。また、治療の目的は「虫歯治療を無駄にしない」ためです。決して遠回りではなく、結果的に最短で最良の治療ゴールへたどり着くための必須プロセスなのです。
治療の主役はあなたです。後悔しないための決断を
「虫歯治療だけ」と「虫歯+歯周病治療」の選択肢がある中で、最終的に決断を下すのは患者さんご自身です。私たち歯科医師は、目の前の症状だけを治す対症療法ではなく、将来にわたって歯を残すための根本的な治療をご提案する義務があります。
歯科医師の本音
目先の要望だけに応えて虫歯を治し、数年後に歯周病でその歯を失うことになったとしたら「なぜあの時、歯周病治療を勧めてくれなかったんだ」と後悔されるかもしれません。私たちが頑なに歯周病治療の重要性をお伝えするのは、そのような患者さんの後悔を未然に防ぎたいからです。
「虫歯治療だけ」というご要望は、大切な歯を守るための見直しのチャンスです。一緒に、10年後、20年後に「治療してよかった」と思える賢い道を選びましょう。
まとめ:「虫歯治療だけ」はNG!あなたの歯を守るために今すべきこと
この記事を通して、「虫歯治療だけして歯周病を放置する」選択が、いかに危険な選択であるかをご理解いただけたかと思います。
【危険な理由】: 虫歯と歯周病は同じ口腔内細菌による病気であり、歯周病で土台が不安定な環境では、虫歯がすぐに再発してしまいます。
【真の代償】: 歯周病は歯を失う最大の原因であり、「糖尿病」「心臓病」といった全身の健康をも脅かす「サイレント・キラー」です。
【賢い選択】: まずは歯周病の初期治療で土台を安定させることが、虫歯治療を長持ちさせ、結果的にあなたの歯を長く残すための最善策です。
治療の主役はあなたです。目先の症状だけでなく、10年後、20年後の健康を見据えた賢い決断こそが、後悔のない人生につながります。もし不安があるなら、ぜひ当院にご相談ください。あなたの不安を解消し、無理のない最適な治療計画を一緒に見つけましょう。LINEまたはお電話(0438-38-4854)からご予約をお取りください。