風邪の時、歯が浮いた感じがするのは「副鼻腔炎」のサイン?
木更津市の歯医者、陽光台ファミリー歯科クリニックのマイクロデンタルアシスタントです🍀
インフルエンザが全国で流行していますね^^;
「風邪をひくと、なぜか決まって奥歯が重く浮く感じがする…」

あなたも、そんな経験はありませんか?
鼻水や喉の痛みといった一般的な風邪の症状と連動して現れる、この「歯が浮くような違和感」。多くの方が「風邪のせいで歯茎が弱っているのだろう」と見過ごしがちですが、実はその違和感は、あなたの歯そのものではなく、そのすぐ上にある空洞「副鼻腔(ふくびくう)」の炎症が原因かもしれません。
特に、上あごの奥歯にこの症状が出た場合、医学的には「急性上顎洞炎(きゅうせいじょうがくどうえん)」、つまり副鼻腔炎の可能性があります。
🧠 なぜ風邪で「歯が浮く・痛い」と感じるのか?そのメカニズム
風邪をひいた時に奥歯が浮く、または痛むと感じる現象は、決して気のせいではありません。これは、上顎(あご)の骨の構造に深く関係しています。
奥歯の根元と副鼻腔の驚くべき近さ
上あごの骨の中には、「上顎洞(じょうがくどう)」と呼ばれる大きな空洞があり、これは副鼻腔の一部です。

奥歯、特に奥歯の根の先端は、この上顎洞の底(天井)と非常に近い位置にあります。人によっては、根の先端が上顎洞の粘膜に接していたり、わずかな骨を隔てているだけということも珍しくありません。

炎症が圧力を生み出し、歯を圧迫する
風邪:風邪のウイルスや細菌により、鼻の粘膜や副鼻腔の粘膜が炎症を起こします。
上顎洞炎(副鼻腔炎):炎症により、上顎洞内の粘膜が腫れ、ドロっとした鼻水(膿)が溜まり始めます。
内圧の上昇:空洞である上顎洞内部の内圧が上昇します。
歯根の圧迫:この上昇した内圧が、歯の根の先端を押しつける形になり、「歯が浮く」「重い痛み」として脳が認識するのです。
【ポイント】 この時の痛みは、歯そのものが原因で起きている「虫歯の痛み」とは異なり、歯の根の周りの組織が圧迫されることによる「関連痛」です。
💊 自分でできる対処法と悪化させるNG行動
風邪が治れば症状も治まるケースが多いですが、痛みが強い間は少しでも楽になりたいですよね。炎症を抑えるためにご自宅でできる対処法と、絶対に避けるべきNG行動をご紹介します。
加湿と休息:副鼻腔の炎症は乾燥で悪化します。部屋を加湿し、体を温めて免疫力を高めることが、最も根本的な解決策です。
やさしく鼻をかむ:強く鼻をかむと、上顎洞の内圧が急激に高まり、かえって痛みが悪化することがあります。片方ずつ、ゆっくりとかみましょう。

口腔内の清潔保持:歯磨きは丁寧に行い、うがい薬や生理食塩水などでうがいをして、口腔内から細菌が副鼻腔へ侵入するのを防ぎます。

市販の鎮痛剤 風邪薬に含まれる一般的な鎮痛・解熱成分(アセトアミノフェン、イブプロフェンなど)は、この関連痛にも有効です。用法・用量を守って服用しましょう。

❌ 症状を悪化させるNG行動
力任せに鼻をかむ: 上述の通り、内圧を高め、症状を悪化させます。
痛む歯を叩いたり、強く噛んで確認する: 炎症を起こしている歯根の周りの組織にさらなる刺激を与え、痛みを増強させます。
🚨 見過ごせない危険なサイン!すぐに病院へ行くべき3つの症状
ほとんどの場合、風邪が治ると歯の浮く感じは自然に解消します。しかし、中には耳鼻咽喉科または歯科での専門的な治療が必要なケースが潜んでいます。
以下の3つのサインが見られたら、すぐに医療機関を受診してください。

サイン1:風邪の症状が治まったのに、歯の痛みだけが続く
数日経って熱や咳、鼻水が改善しても、特定の奥歯の浮く感じや痛みが一向に引かない、または強くなっている場合は要注意です。これは副鼻腔炎が長引いている、あるいは歯が原因で副鼻腔炎を引き起こしている(歯性上顎洞炎)可能性が高まります。
サイン2:特定の歯だけが強く、ズキズキと痛む
関連痛である一般的な上顎洞炎では、奥歯全体が「重い」「浮いている」と感じることが多いです。しかし、特定の1本だけがズキズキと強く痛み、噛むと激痛が走る場合は、その歯自体が重度の虫歯や歯周病、根の病気を起こしている可能性があり、炎症が副鼻腔に波及している(歯性上顎洞炎)サインです。
サイン3:膿のような鼻汁、頬や目の下が重く痛む
黄色や緑色のネバネバした鼻汁が出る。
頬骨や目の下が押すと痛い、あるいは重く感じる。
においが分からなくなる(嗅覚障害)。
これらは、上顎洞内に膿が溜まっている典型的な副鼻腔炎の症状です。耳鼻咽喉科を受診し、適切な抗菌薬や排膿処置を受ける必要があります。
🦷 歯の浮く感じを繰り返さないための予防策
風邪による「歯が浮く感じ」を繰り返さないためには、風邪そのものを予防することと、口腔内の健康を高いレベルで維持することが重要です。
1. 徹底した風邪・アレルギー対策
副鼻腔炎の最大のトリガーは、風邪とアレルギーです。
手洗い・うがいの徹底:ウイルス・細菌の侵入を防ぎます。
鼻うがい:特にアレルギー性鼻炎がある方は、日常的な鼻うがいで鼻腔内を清潔に保つことが、上顎洞炎の予防に繋がります。
免疫力維持:十分な睡眠とバランスの取れた食事で、体の抵抗力を高めておきましょう。

2. 歯性上顎洞炎を防ぐための口腔ケア
上顎洞炎は、副鼻腔の炎症だけでなく、奥歯の根の先の病巣が原因で起こることがあります(歯性上顎洞炎)。これを防ぐことが、最も重要な歯科医師からのメッセージです。
定期的な歯科検診:自覚症状がない初期の虫歯や根の先の病巣を見つけ、副鼻腔炎に発展する前に治療します。
重度の歯周病予防:歯周病が進行すると、根の先端の骨が溶かされ、細菌が上顎洞に入りやすくなります。
「風邪だから仕方ない」と放置せず、口腔内の健康管理を徹底することが、つらい「歯が浮く痛み」から解放される近道です。

📝 まとめ:歯が浮く違和感は、体のSOSサインです
風邪をひいた時に感じる「歯が浮くような違和感」は、あなたの奥歯が悪いのではなく、上あごの骨の空洞「上顎洞(副鼻腔)」の炎症が原因であることがほとんどです。
この症状は、歯の根の先端と上顎洞が近接しているために起こる「関連痛」であり、多くの場合、風邪の治癒とともに自然に解消します。
しかし、この違和感を放置することは危険です。
【🚨 特に受診が必要な3つのサイン】
風邪が治っても、歯の痛みだけが続く。
特定の1本だけが、ズキズキと激しく痛む(歯性上顎洞炎の可能性)。
黄色や緑の膿のような鼻汁、頬の重さや痛みがある。
これらのサインが見られた場合は、耳鼻咽喉科または歯科への受診が必要です。特に歯性上顎洞炎は、歯の治療が必須となります。
風邪の予防と、定期的な歯科検診による奥歯の健康維持が、つらい「歯の浮く痛み」を防ぐ最善の策です。「おかしいな」と感じたら、まずは専門家にご相談ください。

